商品開発プロセスが成功となるためには、7つのポイントがあることを紹介しました。
新商品開発に求められる人材とは?
新商品開発の成功要因の大前提は優秀な人材あってのもの、と言えます。
言い換えると、優秀な人材がいなくてはいくらプロセス、組織、組織文化をうまくマネージしても新商品開発の成功はありえません。
新しいものを創造することにおいて、どんな人でもそれに従えば必ずすばらしいものが創れる方法は私の知る限り存在しません。
新商品開発は個人の能力(創造性、革新性)に頼るところが大きいのです。
新商品開発・新規ビジネス創造のリーダーとなり得る人材の数で、その企業の成長、将来の規模が決まると言っても過言ではないでしょう。
新商品開発の中心となるリーダーに求められる役割・能力は大きく言って次の2つが挙げられます。
商品開発のリーダーに求められる役割・能力とは?
商品開発のリーダーに求められる役割
1.ビジネスの金鉱脈を探しあてる。 新しい商品・事業のアイデアを創 り出す。
2.探しあてた金鉱脈から鉱石を掘り出しこれを練金する。アイデアを具 体的、現実的な計画にしこの計画を強固な意志と情熱で具現化する。
そして、上記2つの役割を果たすためには次の能力が必要です。
商品開発のリーダーに求められる能力
1.創造性があること。新商品、ビジネスの機会は無限であり創 造的なアイデアを創り出す能力が必要。
創造的なアイデアは創造的な人から生まれる、人の能力に大きく依存することが言えます。
定性的な言い方ですが、創造的なアイデアが生み出されるのに共通な要因は、
-既存の常識、価値観にとらわれないこと。決して常識はずれと否定してかからない。
-異なった領域、分野と活発に交流する。異なった領域、分野との境界線 上に新たなものが生まれるチャンスがある。
-創造的なアイデア、仕事を評価する。高い価値観を持つ。
創造的な人は常に様々な異なる分野に興味・好奇心を持ち、行動的で異なった分野の人々と交流し、常識にとらわれず自由な発想をする能力のある人材ということができます。
2.行動的で自分の経験から得た体験的知識に基づいた事業領域の商売に 対する「勘(直感)」が働き、失敗・危険を恐れず挑戦する度胸があ ること。
ビジネスの金鉱脈を探しあてるには科学的な分析手法が必要ですが、科学的定量的な分析だけでは成功しません。
本当の金鉱脈を探す「山師」と同じで、科学的分析手法に加えて経験から得た体験的知識に基づいたビジネスの勘が必要です。
特に新規市場に対する新商品開発では数字に表れていない、定量的に把握できない市場機会を予測し、また顕在化していない、統計的に集計できない市場(潜在)ニーズを読み取らなければなりません。
ビジネスの勘というものが重要で勘の判断が求められるところにこそ今まで誰も踏み入れなかった新しい事業機会があるのです。
3.アイデアを具現化する熱意・情熱・信念・自信(経験に基づいた)が あること。
セオドア・レビット教授は「創造力は企業の成長と典栄にとって、今日あれほどやかましく言われているほど、秘法の杖はない。(創造的)アイデアを考えつくことと革新をつくる(創造的アイデアを具現化する)は異なる。」としています。
ビジネスにおけるイノベーションとは、創造的アイデアを具現化してはじめてイノベーションを行ったといえるのです。
創造的アイデアを思い付くことは比較的容易いといえましょう。
企業は創造性のある人材や創造的アイデアが不足しているのではなくそのアイデアを具現化するノウハウと持続する実行力を持った人材が不足していると言えるのです。
新製品開発ではその過程で様々な障害が発生し、その障害を乗り越えるため、時に何かを犠牲にする(トレード・オフ)かどうかの判断が求められます。
例えば製造コストと性能のトレード・オフ、開発スケジュールの遅れと性能のトレード・オフ等、数え上げたらきりがないほど多くの障害が発生しこれを乗り越えていかなけれぱなりません。
これらの議害を乗り越え革新を実現するためには情熱を持った、ときには気が違ったように思えるほどその実現に執着するプロダクト・マネジャー、ブロジェクト・リーダーが必要です。
ピーターズ&ウォーターマンはこれらの人を「プロダクト・チャンピオン」と呼んでいます。
3M社の元研究開発担当副社長のC.W.ウォルトンば「製品開発の成功に決定的に重要な要素は開発を担当する人間のエクサイトメントだ。」と主張しています。
プロダクト・チャンピオンの製品に対する情熟が様々な困難を乗り越えて製品開発を成功へと導くのです。
創造的人間を育てる組織・組織文化の必要性
創造的人間、創造性を尊重し育てる企業風土が重要ですが、 今まで述べたイノベーティブな人材は時として組織の中では浮いてしまう、疎外される可能性があります。
これらのイノベーティブな人を生み出し、育てるためには組織がこのような人材の価値を認め育てるしくみ、企業風土(組織文化)が必要です。
米国の3M社では旧約聖書の「十戒」にちなんでイノベーティブな人の価値を認め育てる3Mの「11番目の戒律」というものがあります。
この11番目の戒律は「汝、新製品のアイデアを殺すなかれ」というものであり、また同様のもので「人々の自主性・自律性(イニシアティプ)を重視し、決してイニシアティプを殺さない」というものも共有される価値観として存在します。
多少の無駄や失敗は恐れず、イノベーティブな人材が新商品開発・新規事業開発に挑戦できる創造的でチャレンジングな企業文化が企業のイノベーションを繰り返し起こす要因となると言えます。
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