「新商品開発のビジネスプロセス」においては「8つのステージ」があります。
そして前回は、3)商品アイデア創出とスクリーニング、4)商品コンセプト・デザイン、について紹介しました。
1)市場機会分析
2)市場の細分化(セグメンテーション)とターゲット市場の選定
3)商品アイデア創出とスクリーニング
4)商品コンセプト・デザイン
5)商品ビジネスプラン 商品ビジネス戦略の開発
6)商品収益性分析
7)商品の市場導入
8)商品ライフサイクル・マネージメント
今回は、5)商品ビジネスプラン 商品ビジネス戦略の開発6)商品収益性分析、について紹介します。
事業計画を作ることが経営目標達成の第一歩!
経営資源である「人・モノ・金・情報」をマネージし「儲かるしくみ」を創造して経営目標を達成する(事業を成功する)ために大切なのは事前に「事業計画」を作ることです。
「人・モノ・金・情報」のマネージに関わる商品開発と製品仕様、ターゲット市場と販売・プロモーション、製品価格、必要人員と組織、必要設備・器材、開発投資、開発期間、投資・収益計画など、商品のビジネス戦略、事業計画を作成し、事業としての採算性、「儲けるしくみづくり」ができているかを事前に慎重かつ綿密にチェックしておくことが重要です。
この事業計画書だけで投資家から数十億円の資金を集めた例もあるぐらいです。
経営目標を達成するため事業計画書に記載すべきこととは?
事業計画書に記載すべきことは、事業戦略、マーケティング戦略、新商品・新規事業開発で紹介した重要な部分の サマリーが計画書のコアの部分となります。
つまり、
-商品の価値、商品の価値を具現化する商品仕様、開発計画
-商品の売れるしくみ:
「誰に(ターゲット顧客・市場)、誰が(販売チャンネル)、何を(商 品・サービス)、いつまでに、どこで(流通戦略)、ど のように売っ て(販売戦略)、いくら儲けるか(売り上げ・利益)」
-事業に必要な資源・投資 :
「人(人員・組織)、もの(設備・器材・原材料)、金(初期資金・費 用、運転資金)・情報(ノウハウ、仕事のプロセス、情 報管理)」
-財務戦略、採算性計画
これらをまとめ、特に具体的に定量的に計画を立てて事業として儲かるようなプランにすることが求められます。
事業計画による状況判断と失敗に対する予防策実施
ビジネスにおいては楽観的・好意的な見方は禁物です。
情熱を持って仕事をしていると、当然の傾向ですがどうしてもビジネス環境や今後の予測において希望的な見方になりがちです。
優秀なビジネスマネージャは、常にビジネス環境や今後の予測を冷静かつある程度悲観的な目で見て、状況が悪くなっても対処できるように方策を考えておく、早めに手を打っておくことが非常に大切です。
少なくても3ケ月、半年前には手を打って準備しておかなければ、事態が悪くなってからでは手のほどこしようがなく手遅れとなってしまいます。
そのためにも中長期、および短期の事業計画をつくることが絶対必要でこの計画書を作る段階で状況が悪くなった場合に対する方策の検討・準備、失敗する要因の発見と予防策の検討・実施をおこなうのです。
GO/NO-GOを判断するための収益性分析
商品を開発するか、開発を進めるか、市場へ投入するか、に対してGO/NO-GOを判断するために、収益性を検討しなければなりません。
収益性分析の分析項目として一般的に次のものが挙げられます。
収益性分析を行う際に必要な5つの項目と留意すべきこと
1)商品単品の利益率・利益額(予定販売価格と商品原価から計算できる 商品単品の利益)
2)商品の予想売上高(販売単価 x 予想販売数量)
3)投資回収効率(Return On Investment)
新商品開発投資額に対しその 製品からどれぐらい利益が得られるかの指標
(ROI) =商品の年間利益額x商品ライフ(5年)/商品開発投資額4)開発期間・開発工数
4)損益分岐点到達期間(Break Even Time)
5)市場導入の時期 市場の要求にタイミング間に合うか
企業として、事業経営としては、当然達成すべき売上・利益の目標があるはずですから、上記の5項目についても達成目標、具体的な数値目標が設定されているはずです。
多くの企業における収益性分析での失敗は、その商品の全体のビジネス戦略の中での位置づけ、商品戦略が明確でない中で、一律に設定された目標数値を達成できるかどうかで、その商品の開発を進めるかどうかが判断されることです。
例えばその商品単独の利益率が目標値に達しないので、その商品は開発を中止する場合があるとします。
ただ、よく考えなければならないのは、その商品は全体の事業戦略の中で、売上を上げることに重視したものなのか、利益を重視したものなのか、が適切に判断されているかということです。
商品単独でよりも、事業全体で目標の利益が達成されることが大事で、そのためには利益を多少犠牲にしても売上向上を重視した商品も必要なのです。
商品全てが高い利益を生み出す商品であるに越したことはありませんが、市場、競合、自社経営資源という現実のビジネス環境を考えたとき、多くの場合でこれは困難です。
多くの企業において固定費が大きな費用であることを考えると、利益を最大化する一つのコツは売上を損益分岐点よりできるだけ上に持っていけばいくほど利益が大きくなるということです。
損益分岐点を超えてからは売上の伸び率に比べて利益の伸び率は一般的にかなり大きくなります。
損益分岐点分析シート(前期・当期比較)を出品します 予算編成時に必要な前期実績と当期予算の費用構造比較ができます
事業ポートフォリオ戦略で利益の最大化を図る
商品のビジネス目的・目標は、利益を重視するのか、売上・マーケットシェアを重視するのか、を事業ポートフォリオ戦略に従って決める必要があります。
新製品の収益性を分析する際には、事業全体のポートフォリオ戦略に基づいて売上を稼ぐ事業(商品)と利益を上げる事業(商品)とでビジネス目的を区別し、事業全体として利益の最大化を図る必要があります。
新商品開発の投資・リターン・リスクを考える
また、どのぐらい投資すべき商品なのか、どのぐらいのリスクを覚悟で商品開発すべきなのか、事業成長戦略に従ってこれから開発する商品の投資の大きさ、リスクの大きさ、成功した時に得られるリターンの大きさを考えることです。
事業成長戦略に従ってこれから開発する商品は
-今までに無い新しい商品か、既存の商品の延長線上にあるものか?
-どのぐらいのリターンを期待しどのぐらいの投資を許容すべきか、リスクをどのぐらい覚悟すべきか?
を検討することが大切です。
新商品開発の収益性分析のポイントをまとめると
事業戦略に従って収益性を評価することが必要です。
特に、
-商品戦略の目的は売上重視か利益重視か
-どのぐらいの投資を許容すべきか
-既存の商品の延長線上の商品か新しい商品か (売上高など予測があまりつかなくてもリスク覚悟で開発するか)
以上を考えることが収益性分析のポイントとなります。
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