「売れる商品をつくるしくみ」をどう創造すればビジネスは成功するのでしょうか?
ここで紹介する新商品開発のプロセスとは、例えば、ものづくりにおけるモノの設計・製造の仕方とかサービス業における具体的なサービス発想の仕方ではありません。
ここでのプロセスとは、ビジネスプロセスとして、より広い視野で市場調査から商品企画、商品の市場導入、商品のライフサイクル・マネジメントというビジネス全体のプロセスを対象としています。
そしてここでは、その新商品開発のプロセスを構成する8つのステージについて紹介します。
新商品開発のプロセス「8つのステージ」とは?
どのような商品を、どのように創造していけばよいか、という、新商品開発のプロセスは、次のフローのように「8つのステージ」としてまとめられます。
顧客は商品の特性や性能でなく、商品の価値に対して代価を支払います。
上記の新商品開発のプロセスは価値創造のプロセスであり、このプロセスの中でいかに商品の価値が高められるかが重要です。
次にもう少し具体的に各ステージで何をすべきなのかを解説します。
新商品開発のプロセス|各ステージの目的とポイント
顧客に対する商品の価値をできるだけ高めるために新商品開発プロセスの各ステージでのその目的とポイントを紹介します。
1)市場機会分析
[目的]
市場機会=ビジネス・チャンスを見つけること。
言い換えるとビジネスの金鉱脈を探し出します。
つまり、事業戦略と整合性を保つような市場分野・既存の経営資源とのシナジー(関連)効果の期待できる市場分野の中でのビジネス・チャンスを見つけます。
[ポイント]
ビジネスの金鉱脈を探し当てるために、現在および将来の市場環境、ビジネス環境をよく分析することが重要です。
市場(市場規模、成長率)、競合、自社の経営資源(自社の強み・弱み)を分析することから、どのぐらいの売上・利益が得られる可能性があり、どのぐらいのリスクがあるかOpportunity(機会)とリスクを把握します。
なお、新商品開発プロセスにおける「市場機会分析」の詳細については、こちらで解説しています。
2)市場の細分化(セグメンテーション)とターゲット市場の選定
[目的]
多様なニーズの混在する様々な顧客を包含する広い市場の中で、商品を販売するターゲットとなる顧客層(市場セグメント)を決めます。
そして、市場を共通するニーズ・特性を持つ顧客グループに分類(細分化)しターゲットとするセグメントを検討します。
[ポイント]
・何故市場セグメンテーションは必要か どのように細分化すべきか
・ターゲット・セグメントを決める判断基準は何か
・各セグメントの現在及び将来の市場規模、市場の予測成長率、収益性(利益率)は
・各市場セグメントにおける競合に対する自社(自社経営資源)の優位性は
・必要な投資規模やリスクの大きさ
なお、新商品開発プロセスにおける「市場の細分化(セグメンテーション)」の詳細については、こちらで解説しています。
3)商品アイデア創出とスクリーニング
[目的]
具体的な商品アイデアを創出します。
多くのアイデアの中から商品性のあるものをスクリーニングして選択することになります。
[ポイント]
既存の商品の延長線上にある商品か、全く新しい商品か目的を明確にします。
新しい商品の場合は創造的な発想が必要で、既存の常識、価値観にとらわれないこと。
決して常識はずれと否定してかからない。
異なった領域、分野と活発に交流する。
異なった領域、分野との境界線上に新たなものが生まれるチャンスあり。
なお、新商品開発プロセスにおける「商品アイデア創出とスクリーニング」の詳細については、こちらで解説しています。
4)商品コンセプト・デザイン
・商品価値のコンセプト創造
・商品のポジショニング
・商品仕様の設計(デザイン)
[目的]
生み出された商品アイデアをより具体的なものにし商品コンセプトをデザインします。
[ポイント]
商品が顧客に与える価値(ValueまたはBenefit)が重要であることから、まず商品が顧客に与えるBenefitを考え、そのBenefitを与えるための商品が持つべき特長(Advantage)を明確にし、この特長(Advantage)を実現するための主要な商品仕様(Key Feature)を検討します。
また、いかに他の競合商品と差別化するかを考えるため、商品のポジショニングを検討します。
なお、新商品開発プロセスにおける「商品コンセプト・デザイン」の詳細については、こちらで解説しています。
なお、商品のポジショニング分析については、他の記事でも取り上げていますが、その具体例の一つとしてコレスポンデンス分析によってパソコン用セキュリティソフトのポジショニングを明らかにした「ノートパソコンのセキュリティソフトを選んだ方法と乗り換えた理由とは?」が参考になります。
5)商品ビジネスプラン 商品ビジネス戦略の開発
[目的]
ターゲット市場、製品仕様、製品価格などのマーケティング戦略や、開発投資、開発期間、収益計画など商品のビジネス戦略、ビジネスプランを検討作成します。
[ポイント]
この商品を市場に投入することによる「儲かるしくみ」をしっかり検討しておきます。
商品のビジネス戦略が事業全体の戦略と整合性をもっていることが重要です。
なお、新商品開発プロセスにおける「商品ビジネスプラン」の詳細については、こちらで解説しています。
6)商品収益性分析
[目的]
この商品を開発するか、開発を進めるか、市場へ投入するか、について、収益性を検討しGO/NO-GOを判断します。
[ポイント]
収益性分析の分析項目として一般的に次のものが挙げられます。
- 商品単品の利益率・利益額(予定販売価格と商品原価から計算できる商品単品の利益)
- 商品の予想売上高(販売単価 x 予想販売数量)
- 投資回収効率(Return On Investment)新商品開発投資額に対しその製品からどれぐらい利益が得られるかの指標(ROI)=商品の年間利益額x商品ライフ(5年)/商品開発投資額
- 開発期間・開発工数
- 損益分岐点到達期間(Break Even Time)
- 市場導入の時期 市場の要求にタイミング間に合うか
なお、新商品開発プロセスにおける「商品収益性分析」の詳細については、こちらで解説しています。
損益分岐点分析シート(前期・当期比較)を出品します 予算編成時に必要な前期実績と当期予算の費用構造比較ができます
7)商品の市場導入
[目的]
商品を作成・準備し、そして、タイムリーに市場へ投入し、計画していた売上高、利益額、マーケットシェア等のビジネスゴールを達成するようマーケティング戦略を実行します。
プロモーション、価格、流通、商品制作・配送等をマネジメントすることになります。
[ポイント]
商品の価値をいかにうまく顧客に伝えるか。いかに販売チャンネルを売る気にさせるか。顧客を買う気にさせるか、が重要になります。
なお、新商品開発プロセスにおける「商品の市場導入」の詳細については、こちらで解説しています。
8)商品ライフサイクル・マネージメント
[目的]
商品を市場に出した後、「商品の売れるしくみ」について改善を加え、売上・利益を最大化するよう努力するとともに、事業全体のポートフォリオマネージメントの見地から、商品の改善、既存商品の延長線上の商品の追加、商品の廃止を検討・実施します。
[ポイント]
事業戦略でのポートフォリオマネージメントの考えに基づき、投資分野の明確化、投資効率の最大化(Return On Investment)を図ります。
*商品企画の段階、商品開発・試作・テストの段階で商品コンセプト・デザインから商品収益性分析のプロセスは繰り返され、改良されることになります。
なお、新商品開発プロセスにおける「商品ライフサイクル・マネジメント」の詳細については、こちらで解説しています。
新商品開発プロセスは「8つのステージ」をビジネスプロセスとして捉える!
新商品開発プロセスは、市場調査から商品企画、商品の市場導入、商品のライフサイクル・マネジメントという「8つのステージ」をビジネスプロセスとして実行することが大切です。
そして、ここで紹介した「8つのステージ」を効率的に効果のあるビジネスプロセスとして日常的に回していくためには、ビジネスナレッジを体系的に学ぶことができるサービスの利用や、資格取得を目的としなくても体系的な知識を習得できるオンラインで動画学習ができる【グロービス学び放題】の利用がおすすめです。
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