前回までは「売れるしくみづくりであるマーケティング」について紹介してきました。
今回からは「売れる商品を創るしくみ」である新商品開発のマネージメントについて紹介していきます。
新商品開発のマネージメントとは、企業として組織として、いかに「売れる商品を創るしくみ」をつくるかということです。
これから、新商品(新製品・サービス)の開発、および新規ビジネスの創造を成功に導くため、何が重要な鍵(Key Success Factor)となるのかを紹介していきます。
顧客は何に対して金を払うか?
ビジネスの原点はお客様からお金を頂くことです。
では何に対して顧客は代価を支払うのでしょう?
T.レビットは次のように述べています。
「人は製品を買うのではない。製品のもたらす思恵(ベネフィット)の期待を買うのである.人は製品やサービスのために金を払うのではなくて、買おうとしているものが自分にもたらすと信じる価値の期待値に金を払うのである.」
顧客は商品の価値に対して代価を支払うのです。
重要なのは商品の特性や性能でなく、その商品が顧客に与える価値がどのぐらい大きいか、どのぐらいの価値をその商品は持っているかということです。
商品の価値が高ければ顧客はより多くの代価を支払いより多く儲かるということになります。
儲かるしくみづくりである経営という仕事の重要な項目の一つは、提供する商品の価値をいかに高めるかということです。
また、商品開発のプロセスは単に計画した特性・性能の商品を作るものではなく、顧客に与える商品のもたらす価値を創造するプロセスといえます。
売れる商品をつくるしくみはどうあるべきか?
新商品の開発は企業にとって最重要課題の一つです。
どのように重要かは詳しく後に述べますが一般的に言って資本主義自体が自由経済、市場経済の中で新たな事業創造によって成りたつシステムで、資本主義システムの根幹であり、日本、および世界経済の発展も新事業創造によって支えられ発展していくと言って過言ではありません。
事業創造といっても、企業や事業部の器の創り方が重要なのではなく、重要なのはいかに世の中に価値のある新しい商品・サービスを創り出して提供するか、であり、新商品の開発をいかに成功するかということです。
ここでは、売れる商品をつくるしくみを考える時、次の成功法則7つのポイントからそのしくみがいかにあるべきかを考えていきます。
商品開発プロセス|成功法則7つのポイント
ビジネス・マネージャとして成功するためには、新商品(新規ビジネス)の開発は重要です。
Point 1:新商品開発の重要性|なぜ新商品開発は必要か?
事業戦略、マーケティング戦略の中でビジネス(売上・利益)を成長させるには、大雑把に言って新しい商品開発によるものか、または新規顧客開拓によるものか2つの道があります。
一般的に言って、顧客のニーズの多様化が進む中で、同じ商品をニーズの違うより多くの顧客に購入して頂くのは難しく、新商品の開発がビジネスを伸ばすために非常に重要です。
それぞれの企業は様々なビジネス環境に置かれており、一概に正しいとは言えませんが、いかに魅力ある(顧客に価値ある)商品を数多く開発し、市場に提供できるかが企業の成長力の一つの指標であり、その企業がどれだけ革新的であるかどうかを示すものです。
一般的にこの指標は、年間の売上全体に対する新商品の売上比率で数値的に表されます。
どれぐらい新しいものが新商品と定義できるかは、その企業の置かれるビジネス環境によりますが、一例として過去3年以内に開発した商品を新商品とすると、
新商品売上寄与率 =過去3年以内に開発された商品の年間売上高/年間全売上高
として計算でき、この新商品売上寄与率がその企業の革新性、新商品開発力を比較的に表すものです。
ビジネス・マネージャはこれを一つの重要なビジネス成功の指標として管理しなければなりません。
ケース:機器メーカーA社の新商品売上寄与率の変化から読み取れことは?
ここでは、新商品の開発がどのくらビジネスの成功(売上向上、利益率の改善)に重要か、某機器メーカーA社のケースを基に、具体的に検証してみます。
年度 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
売上推移
(2011を100とする) |
100 | 120 | 174 | 188 | 176 | 168 | 144 | 173 |
売上利益率推移
(2011を100とする) |
100 | 99 | 122 | 103 | 87 | 72 | 28 | 44 |
新商品売上寄与率(%) | 20 | 32 | 37 | 46 | 24 | 36 | 29 | 23 |
上記の表は、A社の年度ごとの売上、売上利益率を 、2011年度を100として2011年度と各年度を比較したものです。
また、表の最下段には、その年度からさかのぼって過去 3年以内に開発・発売された新商品の売上の、全体の売上に占める割合が新商品売上寄与率として%で表示されています。
[質問]
さて皆さん、上記のグラフから何が読み取れますか?
[答え]
新商品売上寄与率と売上高(売上の伸び率)、利益率の推移を見てみますと、大雑把に言って新商品寄与率が高い年度は売上、売上伸び率も大きく、また利益率も高くなっていることがわかります。
言い換えると新商品が売れて成功し、これが全体の売上を伸ばし利益率も向上したということになります。
このケースからも学びとれるようにビジネスの成功にとって新商品開発は非常に重要なものであり、いかに魅力ある(顧客に価値ある)商品を数多く開発し市場に提供できるかが企業の成長力の一つの指標であり、その企業がどれだけ革新的であるかどうかを示すものです。
次回からは、ここで取り上げた『成功法則「7つのポイント」』の続きを、順を追って説明していきます。
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