ビジネスで一番大事な「売れるしくみをつくる」のに必要な「マーケティング」をテーマに紹介をしています。
そして、その中核を成す「マーケティング戦略プロセス」を構成する10の重要ステップにおいて、これまで、ステップ1からステップ8までを紹介してきました。
マーケティング戦略プロセス【解説】STEP3~6「重要課題検討~市場細分化」
マーケティング戦略プロセス【解説】STEP7~8「競合差別化~4P」
今回は、このマーケティング戦略プロセスを構成する10の重要ステップにおいて、ステップ9、ステップ10を対象に、説明します。
マーケティング戦略プロセスを構成する10の重要ステップ:9~10
《マーケティング戦略プロセス》
- 経営戦略・経営目標
- ビジネス環境分析(3C分析)
- 経営・マーケティングの重要課題の検討
- ビジネスの主要な成功ファクターを見出す
- 市場のセグメンテーション(細分化)とターゲット・セグメントの選定
- どのような特性(パラメータ)で市場細分化するか
- プロダクトのポジショニングと競合の差別化
- マーケティング目標の設定とマーケティング戦略4つのP
- ホールプロダクトとソリューション
- 時間は差別化の武器
今回は、9と10を順番に説明していきます。
そして、これで「マーケティング戦略プロセス」の紹介は終了となります。
STEP9:「ホールプロダクトとソリューション」で顧客の要求に応える!
前項ではマーケティング戦略を考える中で4P(Product, Price, Promotion, Place)について述べましたが、本項では商品(Product)について掘り下げて考えてみたいと思います。
どういう商品を提供すべきかを考えるときに重要なホールプロダクト(Whole Product)という考え方とソリューション(Solution)という考え方について説明します。
WHOLE PRODUCT(ホールプロダクト)
商売の成功で重要なことの一つは差別化であることを前述しました。
企業としてはいかに競合他社と顧客に提供する商品・サービスを差別化するかが重要なわけです。
差別化ができるのは本来の商品・サービスだけでなくこれらを提供する際の様々な付加サービスにおいても差別化をする必要があり、現に成功している企業は巧みにこれを行っています。
[ケーススタディ : ピザ]
ホールプロダクトをピザを例に考えてみましょう。
代表的なイタリア料理であるピザは世界中で色々な形で食べることができます。
もともとピザはレストランで食べる食事でした。
それが店で買って家庭などの別の場所で食べる「持ち帰り」(Take out) が出現し、また更に電話で注文して配達してもらう「宅配」が出現しました。
これらのピザの調理・販売において、商品はピザであるのですが、顧客が享受する価値はその販売の際の付加的サービスによって大きく異なっています。
宅配ピザに顧客が感じている価値は、恐らくピザ自体の味や、レストランで食べる時と比較した価格ではなく、電話一本でピザが配達され、店舗まで行って買って持ち帰るというわずらわしさが無い利便性であるといえます。
言い換えるとCore 商品であるピザと、付加サービスである電話による注文と配達を合わせたものが、ホールプロダクト(Whole Product)といえるのです。
顧客・市場の要求から考えると宅配ピザの普及は現代社会で共稼ぎの家庭が増えたことや、さまざまなレンタルサービスの普及によるライフスタイルの変化が、調理された料理を電話一本で注文し配達してもらうという宅配ピザに対するニーズを生み出したのです。
企業が競合他社と差別化する場合には、このホールプロダクトというコンセプトでCore商品だけでなく様々な付加的サービスにて差別化することが可能です。
実際に様々な産業で商品だけでなく、その売り方やサポートの仕方で差別化し、ビジネスを成功している企業が見受けられます。
ソリューション(Solution)
ソリューションについてパソコンで文書を作る場合を例に考えてみたいと思います。
この際、顧客がパソコンを購入するときに求めているのは、簡単に美しい文章が作成でき、プリントアウトできることです。
Windowsなどのソフトの使い方を覚えることや、パソコンとプリンタをどうつなぐか、どうプリンタが動くようにソフトをインストールする方法を覚えるか、ということではないのです。
企業として顧客に提供すべきものは、パソコンとソフトではなく、簡単に美しい文章が作成でき、プリントアウトできるという顧客要求(または顧客の抱える問題)を解決するソリューション(Solution)なのです。
以前にも述べましたが、顧客が金を支払うのは商品を使用したときに得られる価値に対してであり、顧客要求(または顧客の抱える問題)を解決することが、顧客にとっての価値に直接つながることを考えると、商品(Product)ではなく、ソリューション (Solution)を顧客に提供することの重要性が理解頂けると思います。
商品を考えるときの2つのポイント
- Core商品だけでなく付加的サービスを含めたホールプロダクトでの差別 化が必要。
(Core商品と付加的サービスを合わせたホールプロダクトを顧客は購入す る) - 顧客要求(または顧客の抱える問題)を解決するソリューション (Solution)を提供することが重要
STEP10:「時間は差別化の武器」( Time-based Competition)
ここでは商品・サービスの質、価格から少し見方を変えて、いかに早く商品・サービスを提供するか、いかに早く顧客要求をサポートするかが大切か、重要な差別化の要素かという時間というパラメータでビジネスを考えてみたいと思います。
過去に競争優位性を最もうまく達成する方法は、「最高の価値を最低のコストで提供すること」とされてきました。
しかし、新しい企業成功の公式は「最高の価値を最低のコストで最短時間内に提供すること」となっているように思います。
時間というのが競争に勝つ重要なパラメータであり昨今「Time-based Competition」という言葉でも表現されています。
Time-based Competitionの背景
時間がますます重要なパラメータになっている背景として、一般的に下記の市場環境・市場ニーズが挙げられます。
- 欲しいものをより早くより簡単に手に入れたい。24時間いつでも、どこ でも。
- 市場ニーズ、顧客の要求はますます多様化してきている。
- ビジネスは国境を越え、ますますグローバル化してきている。販売・流通 の時間がより大きな問題に。
- コストダウンの圧力から無駄な工数、無駄な時間、特に間接的な業務の工数・時間の削減が必要となる。
- 技術の進歩、情報・通信のインフラ・ストラクチャーの進歩により製品 のライフサイクルが短くなる。
- 有償・無償を問わずサポートに対して顧客は即座に企業が対応することを期待している。タイムリーなサポートが顧客満足を向上させリピート客を増やす。
スピードアップは社員の意識改革から → 組織文化が重要!
新製品開発時間の短縮、製造時間・工数の削減、受注業務・流通の効率化など、事業のスピードを高めるためには、様々な組織、プロセスの改革が必要です。
そして、実際の企業の事例を見てみると、その根元は社員の意識、言い換えると組織文化(共有される価値観、行動規範、ものの見方・感じ方)に行き着きます。
下記は典型的なスピードの優位性のある企業が持つ組織文化の例です。
- 走りながら考える。 (考えてから走るのではなく。)
- かまえ、打て、狙え。 それで十分だ。(かまえ、狙え、打てではない)
- 10日で100%のQualityの仕事が3日で70%までできるのであれば3日で終 わらせる。どうせ100%はできないのだから。
上記の言葉は多少乱暴に聞こえるかもしれませんが、実際に企業経営者の社員改革のための生の言葉です。
皆さんの企業ではあてはまりますか?
いかがでしょう?
今回をもって、「マーケティング戦略プロセス」についての解説は終了です。
NEXT→ 次回からは、新商品開発プロセスが始まります
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