幼児教育・保育の無償化がスタート!その背景にある理由とは?

コト

2019年10月1日から幼児教育・保育の無償化がスタートしました。これで、幼稚園・保育所・認定こども園などを利用する3歳~5歳児クラスの子供たちや、住民税非課税世帯の0歳~2歳児クラスまでの子供たちの利用料が無料になります。

 

その背景にあるのは、幼児教育がその後の人生にどのような影響を与えるか、過去50年以上にわたり続けられてきた地道な研究成果にあると言えます。

 

今回は、これまでの日本国内における教育支出に関する実態を数字で把握したうえで、幼児教育・保育の無償化がスタートした背景を明らかにし、幼児教育の重要性について解説します。

幼児教育における日本の教育支出の実態とは?

平成26年12月にまとめられた国立教育政策研究所のレポートによって、日本の教育支出の実態が明らかにされています。この内容を見れば、これまでの日本における幼児教育における状況が良く理解できると思います。

幼児期の教育支出がOECD平均の50%にも満たない現実

同レポートには、子供一人当たりの国としての教育支出(対一人当たりGDP比)についての指標が出ています。

これは、国別にまとめ比較したもので「就学前教育段階(=幼児期)」「初等中等教育段階(=小中学生)」「高等教育段階(高校生)」に分けられています。

 

「就学前教育段階(=幼児期)」では、OECD平均が18.8%なのに対して、日本は8.2%と低い数字に留まっています。つまり、50%にも満たないほど低い水準であるという事です。

「初等中等教育段階(=小中学生)」では、OECD平均が24.8%であるのに対して、日本は24.8%と同じ水準になっています。

「高等教育段階(=高校生)」では、OECD平均が37.6%なのに対して、日本は26.2%と低い数字に留まっています。

 

幼児期の教育支出の公私支出割合も公的負担は50%以下の現実

一方、教育支出における公私負担割合を見ていると、

「就学前教育段階(=幼児期)」では、公的支出の割合が、OECD平均は81.6%であるのに対して、日本は45.4%と50%以下と低くなっています。

「初等中等教育段階(=小中学生)」では、公的支出の割合が、OECD平均が91.4%なのに対して、日本は93.0%とやや高めになっています。

「高等教育段階(=高校生)」では、公的支出の割合が、OECD平均が69.2%であるのに対して、日本は34.5%と40%以下と低くなっています。

 

以上から、教育支出に対する公的負担は、日本の場合、小中学校の義務教育においては、OECD平均並みですが、幼児期や高等学校教育においては、OECD平均より著しく低く、一般家庭への負担が大きいという現実を示しています。

この現実を受けて、日本では、幼児教育の無償化が実現し、2019年10月1日よりスタートしたということは喜ばしい限りです。

幼児期教育のより一層の充実が必要である理由とは?

これまでの国内外の研究によれば、子供は親や家庭環境の状態によっては否定的影響を受ける可能性が高く、一方で、家庭外教育者との出会いが学業成績に良い影響を与えたり、教育が子供の適応を高める効果があることがわかっています。

(例1)家庭外教育経験と学業成績

(O’Connor & McCartney,2007: アメリカNICHD縦断研究)

この研究によれば、家庭外の幼稚園や小学校などで教師と出会い、良好な関係を持つ経験が、小学校3年時の子供の学業成績に影響を与えることがわかっています。

特に、母親との関係性が不安定である場合には、教師との良好な関係を持つ経験の効果が高いという結果が出ています。

(例2)家庭や親との歴史は容易に変えられないが公教育が介入できる可能性がある

(イギリスEPPE研究:Sylva et al., 2011)

この研究によれば、11歳児の数学、英語、自己調整力の発達には、3~4歳時の家庭における学習と遊びの環境(絵本読み、文字や数字の学習など)や、幼児教育の経験・質が組み合わされて関係してくることが分かっています。

これは、例え家庭環境が悪かったとしても、質の高い幼児教育が子供に肯定的な効果をもたらすということを意味します。

幼児教育がその後の認知的および非認知的能力発達に与える影響とは?

複数の大規模研究は、就学前の幼児教育の「質」や「年数」が、その後の子供の認知的及び非認知的能力発達に肯定的な影響を持つとの報告をしています。

ここで、認知的スキルとは、IQテストや学力検査などによって測定される能力のことで、非認知的スキルとは、肉体的・精神的な健康や、忍耐力、やる気、自信、協調性のような社会的な性質のことです。

 

(例1)ペリー就学前計画(アメリカ)

幼児期の就学前教育プログラムへの参加によって、認知的能力のみならず、非認知的能力が高まることで、将来の所得向上や、生活保護受給率の低下など、長期的効果が表れたと報告されています。

(例2)NICHD(アメリカ)

幼児期の就学前教育(生後6、15、24、36か月)の「質」が、15歳時の学業成績の高さと、優れた社会性に影響を与えたとの結果が報告されています。

(例3)EPPE(イギリス)

幼児期の就学前教育の「質」と就学前教育を受けた「年数」(特に3・4歳時)が、小学6年時の学業成績と社会性(自己調整力)に肯定的影響を与えたとの報告があります。

0歳時から始める幼児教育がその後の人生を決める

幼児期の就学前教育に関する数多くの研究結果から、幼児期、特に0歳児から幼児教育を始めることが、その後の人生に大きな影響を与えることが分かっています。

 

これまでは、子供の教育は、義務教育中心に学力重視の観点から、教師の数を増やしたり、カリキュラムを変更したりといった就学後の取り組みが重要視されてきました。

 

しかし一方で、前述のように多くの研究成果から、幼児期の就学前教育が一番重要であることが明らかとなっています。これは、脳科学の観点からも、就学前ではなく、就学前の幼児期での積極的な働きかけがとても重要であることが判明しています。

 

幼児教育・保育の無償化が始まった今、幼児の教育を担う保育士や幼稚園の先生はもちろん、育児に勤しむ親についても、幼児教育の方法について、改めて科学的な方法論への理解と習得が必要な時期にきているように思います。

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