このブログでは、これまで日経225採用銘柄を対象にして、7つのセクター(自動車、建設、小売、鉄道、通信、医薬品、電気機器)毎に、そのセクターに属する銘柄の財務データを元に、銘柄同士のポジショニング分析を行ってきました。
今回は、分析した銘柄が属する7つのセクターに対して、セクター同士のポジショニング分析を行います。
日経225採用銘柄・7つのセクターの3年間のポジショニングの動きでわかることは?
ポジショニングマップ上に示した7つセクターの3年間のポジション変化を見ることができれば、他のセクターとの相対的な位置関係と、その位置取りの変化、加えて、その変化がマーケットの魅力という視点に対してどのような意味を持つのか、が明らかとなり、そして、今後、そのセクターが投資対象として候補になりうるかどうか、自ら判断することができるようになります。
具体的には、この分析によって、セクター同士の総合力、収益性といった業績に関する位置取りが明らかとなります。
この分析結果から、もし総合力を示すROEが高いセクターであれば、株主の期待に応えている企業が多そうだと言うことができると思いますし、収益性が高いセクターであれば、今後の成長投資が十分にできそうな企業が多そうだ、という見方ができると思います。
今回分析対象とした7つのセクターとは?
今回対象としたのは、これまでポジショニング分析を行ってきた日経225採用銘柄が属する「自動車」、「建設」、「小売」、「鉄道」、「通信」、「医薬品」、「電気機器」の7つのセクターです。
自動車セクター
7201 日産自動車/7202 いすゞ/7203 トヨタ/7205 日野自動車/7211 三菱自動車/7261 マツダ/7267 ホンダ/7269 スズキ/7270 スバル/7272 ヤマハ発動機
以上、10社
建設セクター
1721 コムシス/1801 大成建設/1802 大林組/1803 清水建設/1808 長谷工コーポ/1812 鹿島/1925 大和ハウス/1928 積水ハウス/1963 日揮
以上、9社
小売セクター
3099 三越伊勢丹HD/3382 セブン&アイHD/8233 高島屋/8252 丸井グループ/8267 イオン/9983 ファーストリテイリング
以上、6社
鉄道セクター
9001 東武鉄道/9005 東急電鉄/9007 小田急電鉄/9008 京王電鉄/9009 京成電鉄/9020 JR東日本/9021 JR西日本/9022 JR東海
以上、8社
通信セクター
9421 スカパーJSAT HD/9432 NTT/9433 KDDI/9437 NTTドコモ/9613 NTTデータ/9984 ソフトバンク
以上、6社
医薬品セクター
4502 武田薬品工業/4503 アステラス製薬/4506 大日本住友製薬/4507 塩野義製薬/4519 中外製薬/4523 エーザイ/4568 第一三共/4578 大塚HD
以上、8社
電気機器セクター
3105 日清紡HD/ 6479 ミネベア/ 6501 日立製作所/ 6503 三菱電機/ 6504 富士電機/ 6506 安川電機/ 6674 GSユアサ/ 6701 NEC/ 6702 富士通/6703 OKI/ 6724 セイコーエプソン/ 6752 パナソニック/ 6758 ソニー/ 6762 TDK/ 6770 アルプス電気/ 6773 パイオニア/ 6841 横河電機/ 6857 アドバンテスト/ 6902 デンソー/ 6952 カシオ計算機/ 6954 ファナック/ 6971 京セラ/ 6976 太陽誘電/ 7735 大日本スクリーン/ 7751 キヤノン/ 7752 リコー/ 8035 東京エレクトロニクス
以上、27社
7つのセクターを対象に実施した具体的方法は?
各セクターで分析を行った銘柄ごとの3期分の8つの指標に対して、その平均を求め、その数値を元にポジショニング分析を実施しました。
具体的には、次の段取りで取り組みました。
- 各セクターに属する銘柄の3期分の8つの指標を一覧にまとめ、その平均を求めます。
- 各セクターごとに3期分の8つの指標の平均値を一覧にまとめます。
- 各セクターの3期分の8つの指標の平均値に対して、因子分析を実行し、因子得点を求めます。
- 因子分析によって得られた因子得点を元に、ポジショニングマップを作成します。
日経225採用銘柄・7セクターの3年間の業績(平均値)をマーケティング分析手法を使って分析した結果は?
日経225・7セクター(合計74社)を分析する指標は8つ(ROA、ROE、売上高経常利益率、総資産回転率、自己資本比率、売上高成長率、キャッシュフローマージン、フリーキャッシュフロー)です。
8つの指標を選んだ理由については、マーケティング分析手法を応用した株スクリーニングに使用する8つの指標は?で説明していますので、そちらを参考にしてください。
そして、今回の分析対象期間は、2015年度、2016年度、2017年度です。
日経225採用銘柄・7セクター(合計74社)の3年間のポジショニングの変化は?
日経225採用銘柄・7セクター(自動車/建設/小売/鉄道/通信/医薬品/電気機器)の3期分の財務データから8つの指標を算出し、各セクターごとに平均値を求め、マーケティング分析手法の一つである因子分析を実施。
そこから得られた因子得点を、ポジショニングマップ上に示しました。
◆は2015年度、■は2016年度、▲は2017年度を示しています。
この後、個別に分析・検証します。
各セクターのポジショニングの変化は?
日経225採用銘柄・7セクターごとの分析結果を紹介します。
自動車セクター
ポジショニングは、左側エリアに位置し、7セクターの中では比較的収益性が低いことを示しています。
特に、2015年度の位置に対して、2017年度がより右側に移動していませんので、収益性が高まってきたとは言えない動きとなっています。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 9.2% | 14.5% | 7.9% | 113.2% | 38.8% | 1.7% | 9.2% | 259.0 |
2016 | 6.6% | 8.4% | 6.3% | 103.1% | 40.0% | -4.0% | 7.6% | 92.8 |
2017 | 7.8% | 13.4% | 7.0% | 105.2% | 42.8% | 8.9% | 8.5% | 140.2 |
指標は、2016年度にセクター全体で売上高が減少していますので、その影響が、ROA、ROE、経常利益率、キャッシュフローマージンの低下に影響を与えています。
2017年度に売上高が回復していますが、2015年度の数値を超えるまでには至っていません。
それでも、株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が+8%と上昇しています。
ポジショニングマップは、左側エリアに位置し、7セクターの中では比較的収益性が低いことを示しています。
しかし、2015年度、2016年度、2017年度と、ポジションは右上へと移動しつつありますので、着実に総合力、収益性を高めつつあるように見受けられます。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 7.5% | 12.9% | 7.0% | 104.9% | 40.9% | 5.4% | 3.9% | 25.0 |
2016 | 7.7% | 13.2% | 7.5% | 100.0% | 42.6% | 0.0% | 7.8% | 68.1 |
2017 | 8.5% | 14.2% | 8.6% | 96.3% | 43.9% | 4.8% | 7.1% | 65.9 |
指標は、総合力を示すROA、ROE、収益性を示す経常利益率が、年々上昇していますので、ポジショニングマップでの分析と一致する結果となっています。
株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が+14.0%と上昇しています。
ポジショニングマップは、右側エリアにあり、ほとんど動きがありません。7つのセクター内で比較的収益性が高いことを示していますし、安定的な業績推移であると言えますが、一方では、次の成長機会に向けた新たな取り組みが必要な状況にあるのかもしれません。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 6.5% | 11.7% | 14.0% | 50.4% | 40.4% | 2.8% | 18.7% | -60.3 |
2016 | 6.3% | 11.7% | 14.1% | 48.4% | 39.2% | 2.6% | 18.7% | -107.4 |
2017 | 6.0% | 10.9% | 14.1% | 46.5% | 37.9% | 2.2% | 18.7% | -92.0 |
指標は、総合力を示すROA、ROEが毎期下がってきていますが、経常利益率はほぼ同じ結果となっています。
売上高成長率が下がってきているのが気になるところです。
株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、+1.0%とほとんど変化がありません。
ポジショニングマップは、右側エリアに位置し、7つのセクター内では、比較的収益性が高いことを示しています。ほとんど動きがありませんので安定した収益性であると言えると思います。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 5.1% | 10.0% | 13.9% | 41.8% | 32.3% | 2.7% | 18.5% | 88.6 |
2016 | 5.0% | 10.4% | 14.2% | 39.9% | 33.1% | -0.1% | 18.0% | -156.3 |
2017 | 4.9% | 9.2% | 14.4% | 39.1% | 34.1% | 2.5% | 19.3% | -89.8 |
指標は、総合力を示すROA、ROEが下がってきていますが、経常利益率は上昇してきています。
株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、0と変化がありません。
ポジショニングマップは、右上側エリアに位置し、2016年度に急激に総合力が強い結果となっていますが、2017年度には2015年度の右上に戻ってきています。
7つのセクター内では、比較的収益性が高いと言えます。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 8.0% | 11.4% | 13.2% | 62.4% | 47.6% | 3.8% | 18.4% | 221.9 |
2016 | 8.2% | 16.6% | 14.1% | 59.7% | 47.1% | 5.4% | 18.8% | -199.6 |
2017 | 8.0% | 12.5% | 14.0% | 59.6% | 48.1% | 2.4% | 18.9% | -226.7 |
指標は、売上高成長率は順調に伸びてきており、経常利益率も高まりつつあります。
株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、+1.0%と僅かに上昇となっています。
ポジショニングマップは、右側エリアに位置し、2015年度から2016年度、2017年度と右上へと移動しており、総合力、収益性共に、良くなってきていることを示しています。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 7.9% | 8.0% | 13.4% | 59.8% | 66.4% | 7.2% | 14.9% | 35.7 |
2016 | 7.8% | 8.8% | 13.8% | 56.6% | 64.7% | -0.3% | 15.0% | -5.1 |
2017 | 8.6% | 9.9% | 15.3% | 58.2% | 66.7% | 5.2% | 17.1% | 114.8 |
指標は、2016年度に売上高が減少しているのですが、総合力を示すROA、ROE、収益性を示す経常利益率、キャッシュフローマージンが良くなってきています。
株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、+9.0%と上昇しています。
ポジショニングマップは、左下側エリアに位置し、2015年度から2016年度にかけて総合力、収益性ともに悪化していますが、2017年度には、2015年度を上回るような伸びを示しているように見受けられます。
年度 | ROA | ROE | 経常 利益率 | 総資産 回転率 | 自己資本比率 | 売上高 成長率 | CF マージン | フリーCF 10億円 |
2015 | 6.9% | 9.7% | 8.0% | 98.1% | 45.2% | 5.7% | 8.5% | 17.7 |
2016 | 6.0% | 8.9% | 7.6% | 90.8% | 45.9% | -3.3% | 9.8% | 28.9 |
2017 | 7.0% | 10.6% | 8.3% | 93.3% | 46.7% | 11.1% | 9.2% | 70.3 |
指標は、売上高が2016年度に減少している影響で、総合力を示すROA、ROE、収益性を示す経常利益率が下がっていますが、2017年度には、売上高が急回復し、ROA、ROE、経常利益率がいずれも2015年度の数値を上回っています。
このことが評価されたのか、株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が+22.0%と上昇しています。
日経225採用銘柄・7セクターのポジショニング分析から見えてきたことは?
7つのセクターの中で、建設セクター、医薬品セクターが3期にわたり、順調に業績を伸ばしていることがわかりました。
また、電気製品セクターが2016年度に売上高を減少させながらも、2017年度には急回復している状況も確認できました。
今後も、日経225採用銘柄に対するポジショニング分析を続け、今回のようにセクター同士のポジショニング分析にも取り組む予定です。
以上、日経225採用銘柄・7セクターを対象に、2015年度、2016年度、2017年度の指標化した財務データの平均値を用いて、因子分析を実行の上、その結果(因子得点)をポジショニングマップ上に示し、セクターごとに解説しました。
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