日経225採用銘柄・不動産5社!3年間の財務データを元にポジショニング分析!!注目銘柄は?

不動産

今回は、日経225採用銘柄の「不動産」セクター5社を対象に、3年間の財務データを元にポジショニング分析を行います。

まず最初に、不動産業界の動向について確認しておきます。

不動産業界の動向は?

国内市場動向(住宅)~住宅着工は貸家に変化の兆し

2017年度の住宅着工戸数は、貸家の減少等から3年振りに減少に転じ94.6万戸(前年度比-2.8%)となりました。
2018年度は2019年10月に予定される消費税増税前の駆け込み需要が見込める一方で、貸家需要の落ち込みが続くこと等から住宅着工戸数は減少する見込みです。

国内市場動向(オフィス<東京>)~賃料・空室率ともに改善

オフィスビル賃貸市場(東京都心5区)では、企業の旺盛なオフィス拡張ニーズを背景に空室率低下(2018年5月末2.7%<前年同月比△0.7%P>)と賃料上昇(同20,019円<同+6.5%>)が進んでいます。2018年以降は新規竣工物件の供給が増加するものの、テナント付は順調に進んでおり、当面市況は底堅く推移するとみられます。尚、大阪、名古屋、福岡等の主要都市でも足下の空室率・賃料は堅調に推移しています。

不動産投資家調査~不動産市況はピークに

ここ数年、低金利等を背景として、不動産投資市場への旺盛な資金流入が続いてきました。もっとも、地価や物件価格の上昇による期待利回りの低下を受けて、投資家の間ではマーケットは既にピークに達しているとの見方が大勢を占めつつあります。このため、都市部一等地物件では高値での売買事例が続いていますが、全体としては一段の価格上昇(キャップレート低下)は期待しにくくなっており、金利等のマクロ環境に変化がない前提においては、当面高止まりの状態が続くことが予想されます。

不動産テックの動向

不動産取引にITを使う「不動産テック」にベンチャー企業等が相次いで参入しています。AIやビックデータの活用による不動産価格の可視化・査定やVRを活用した物件内見といったサービスの多様化が進んでおり、今後は大手企業の参入も含めた更なる活発化が予想されます。

(以上、三井住友銀行HPより引用)

日経225採用銘柄・不動産大手5社の3年間のポジショニングの動きでわかることは?

ポジショニングマップ上に示した5社の3年間のポジション変化を見ることができれば、他社との相対的な位置関係と、その位置取りの変化、加えて、その変化が業績に対してどのような意味を持つのか、が明らかとなり、そして、株価の動きとの関係について、自ら判断することができるようになります。

今回分析対象とした不動産大手5社とは?

今回対象としたのは、日経225採用銘柄で不動産セクターの5社です。

3289 東急不動産/ 8801 三井不動産/ 8802 三菱地所/ 8804 東京建物/ 8830 住友不動産

各銘柄の特徴は?

3289 東急不動産

東急電鉄系の総合不動産大手。ビル賃貸が利益柱。リゾート開発から東急ハンズまで業容多彩

8801 三井不動産

三菱地所と並ぶ総合不動産の双璧。ビル賃貸主力。マンション分譲、非保有不動産事業を拡大

8802 三菱地所

三菱グループの総合不動産。賃貸は東京・丸の内が基盤。大手町へ再開発展開中。海外にも特徴

8804 東京建物

旧安田系の総合不動産業。賃貸ビルとマンションが主力。シニア向け住宅、駐車場などを育成中

830 住友不動産

総合不動産大手。東京中心にオフィスビル、マンション開発。住宅リフォーム事業で独自の強み

(以上、Yahooファイナンスの企業情報より引用)

不動産大手5社の3年間の業績をマーケティング分析手法を使って分析した結果は?

不動産大手5社を分析する指標は8つ(ROA、ROE、売上高経常利益率、総資産回転率、自己資本比率、売上高成長率、キャッシュフローマージン、フリーキャッシュフロー)です。

8つの指標を選んだ理由については、マーケティング分析手法を応用した株スクリーニングに使用する8つの指標は?で説明していますので、そちらを参考にしてください。

そして、今回の分析対象期間は、2015年度、2016年度、2017年度です。

8804 東京建物は12月決算で、他4銘柄が3月決算となっています。

不動産大手5社の3年間のポジショニングの変化は?

不動産大手5社の3期分の財務データから8つの指標を算出し、マーケティング分析手法の一つである因子分析を実施。

その因子得点を求め、ポジショニングマップ上に示しました。

は2015年度、は2016年度、は2017年度を示しています。

全体の傾向として、右肩上がりに位置しているように見受けられます。

今回、ポジショニングマップの軸が、横軸は収益性、縦軸は総合力を現しており、それぞれ右方向、上方向へと年々ポジションを変えていく、つまりは右上方向へ移動していくことが理想ですが、全体としてそのような動きになっているのかもしれません。

この後、個別に分析・検証します。

各銘柄のポジショニングの変化は?

不動産大手5社の各銘柄ごとの分析結果を、証券コードの若い順に紹介します。

3289 東急不動産

ポジショニングマップは、左側に位置し、不動産セクター5社の中では、相対的に収益性が低いことを示しています。

一方で、総合力では、ほぼ横軸上に位置していますので、不動産セクター5社の中では、平均的な総合力であることを示しています。

2015年度から2016年度にかけて、若干右上方向へポジションを変え、2017年度には若干上方向へポジションを変えています。

このことから、年々、収益性が改善しつつ総合力が強くなってきていることを示しています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20152.8%7.1%6.9%41.1%21.1%5.5%10.8%-24.5
20163.1%7.3%7.9%39.1%21.4%-0.9%8.5%-2.1
20173.2%7.7%7.9%39.8%21.5%7.1%1.4%-84.2

指標は、2016年度に売上高が減少していますが、ROA、ROEが上昇し、総合力が強くなりつつあることを示しています。

経常利益率が2015年度から2016年度にかけて上昇し、2017年度はその数値を維持しており、収益性も高くなりつつあることを示しています。

以上、総合力が強くなりつつあり、収益性も高くなりつつあることから、その結果が、ポジショニングマップ上でのポジションに動きとなって現れています。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、+0.7%と上昇しています。

8801 三井不動産

ポジショニングマップは、縦の中心に近い左上側に位置し、不動産セクター5社の中では、収益性がほぼ平均レベルであるのに対し、総合力では、一番強いポジションにあることを示しています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20153.4%6.2%11.6%29.2%35.8%2.6%2.1%-207.6
20163.9%6.7%12.9%30.6%35.6%8.7%13.3%25.8
20173.8%7.4%13.7%27.8%35.0%2.7%1.7%-335.3

指標は、年々順調に売上高を増加させており、総合力を示すROE、収益性を示す経常利益率も年々上昇しています。

2015年度と2017年度のフリーキャッシュフローが大幅なマイナスであるため、大掛かりな投資をしていることが伺えます。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が、-4.1%と下落しています。

8802 三菱地所

ポジショニングマップは、右側エリアに位置し、不動産セクター5社の中では、相対的に収益性が高いことを示しています。一方で、ポジションは、2017年度にかけて若干右側に変化しているように見えますので、収益性が高くなりつつあることを示しています。

また、2015年度から2017年度にかけて、上方向へポジションを変えていますので、年々、総合力が強くなってきていることを示しています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20152.7%5.6%14.4%19.0%28.4%-9.1%13.5%-95.2
20163.1%6.6%15.1%20.5%29.0%11.5%15.0%-158.8
20173.3%7.3%16.0%20.6%29.3%6.1%24.6%6.5

指標は、売上高が2015年度に減少していますが、その後は、増加しています。

総合力を示すROA、ROEが年々上昇しており、ポジションの動きと一致しています。

収益性を示す経常利益率も年々上昇しており、こちらもポジションの動きと一致しています。2016年度にフリーキャッシュフローが大きなマイナスとなっていますので、大掛かりな投資をしたことを示しています。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が-7.2%と減少しています。

8804 東京建物

ポジショニングマップは、左下側エリアから右下側エリアへと移りつつある動きとなっています。これは、「ポジショニングマップ上の左側エリアから右側エリアへ移動している銘柄の株価は大きく上昇する」というポジショニング分析の法則が現れたことになります。

左側エリアは、セクター内での平均より相対的に弱い状況、右側エリアは相対的に強いことを示しており、中心線が平均的となります。

このことから、左から右へ移動することの意味がご理解いただけると思います。

つまりは、セクター平均より弱かった収益性が高くなった、ことを示していますので、それが株価にも良い影響を与えたと考えることができます。

確かに、株価は3年間の年平均伸び率(CAGR)が+7.3%と上昇しています。

さらに、各年度のポジションの変化が右肩上がりであるため、総合力、収益性ともに改善していることを示しています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20151.9%5.6%9.5%20.0%23.2%9.7%8.4%0.5
20162.3%6.4%12.0%19.4%24.2%-2.1%15.2%-14.2
20172.7%6.8%14.8%18.5%23.9%4.9%-5.3%-78.7

指標は、2016年度に売上高が減少しているのですが、総合力を示すROA、ROE、収益性を示す経常利益率が上昇しています。

このことが、ポジションの変化となって現れています。

8830 住友不動産

ポジショニングマップは、右側エリアにあり、不動産セクター5社の中で相対的に収益性が高いことを示しています。

さらに、ポジションの変化が、2015年度以降、右上方向へと移動していますので、総合力、収益性ともに改善されていることを示しています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20153.2%10.2%17.4%18.3%19.0%6.0%11.2%-9.3
20163.4%10.9%18.1%18.6%20.2%8.2%17.1%-115.7
20173.6%11.3%19.7%18.3%21.5%2.5%20.0%-30.6

指標は、売上高が順調に増加する中、総合力を示すROA、ROE、収益性を示す経常利益率が年々上昇しています。

この結果が、ポジションの右上方向への移動となって現れています。

2016年度にフリーキャッシュフローが大幅なマイナスですので、大掛かりが投資をしていると考えられます。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が+9.3%と上昇しています。

不動産大手5社のポジショニング分析から見えてきたことは?

今回も、「マップ上の左側のエリアから右側エリアへ移動しつつある銘柄の株価伸び率は高くなる」というポジショニング分析の法則が、8804 東京建物で出現しました。

また、右側エリアで、さらに右へ移動しつつある銘柄も株価が上昇しやすいのですが、8830 住友不動産で出現しました。

今後も、ポジショニングマップの動きで大まかな状況を把握した上で、8つの指標で詳細な分析をする、ということを心掛けていきたいと思います。

 

 

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