日経225採用銘柄・精密機器5社!3年間の財務データを元にポジショニング分析!!注目銘柄は?

投資

今回は、日経225採用銘柄の「精密機器」セクター5社を対象に、3年間の財務データを元にポジショニング分析を行います。

まず最初に、精密機器業界の動向について確認しておきます。

精密機器業界の動向は?

精密機器業界の過去の推移を見ますと、平成17年から平成19年にかけて上昇。平成19年から平成21年まで減少に転じましたが、平成22年から24年までは横ばい、平成24年からは再び増加に転じています。

精密機器業界は主に、医療機器、時計、計測機器分野に分けられます。

近年の医療機器業界は増加傾向にあります。特に平成24年から27年にかけて大幅な増加へと転じています。今後は先進国は高齢化が進み、新興国は経済の発展に伴う医療水準の向上が見込まれるため、医療機器業界は安定的な成長が期待できる分野とも言えます。

一方、時計業界は近年の景気後退、消費不況などの影響を受け、不振が続いていましたが平成25年には増加に転じました。平成27年3月決算では、カシオ、シチズン、セイコーの大手3社とも増収を記録していますが、伸び率は鈍化しており、リーマンショック前の水準にはいまだ至っていません。

測量機器分野は国内景気の回復基調に伴い、民間向け、官庁大学向けともに堅調な推移を見せています。平成27年は医療機器、時計、計測機器の3分野とも前年に比べ増加となり、精密機器業界全体としてもプラス成長を記録しています。

(以上、業界動向リサーチHPより引用)

日経225採用銘柄・精密機器大手5社の3年間のポジショニングの動きでわかることは?

ポジショニングマップ上に示した5社の3年間のポジション変化を見ることができれば、他社との相対的な位置関係と、その位置取りの変化、加えて、その変化が業績に対してどのような意味を持つのか、が明らかとなり、そして、株価の動きとの関係について、自ら判断することができるようになります。

今回分析対象とした精密機器大手5社とは?

今回対象としたのは、日経225採用銘柄で精密機器セクターの5社です。

4543 テルモ/ 4902 コニカミノルタ/ 7731 ニコン/ 7733 オリンパス/ 7762 シチズンHD

各銘柄の特徴は?

4543 テルモ

医療機器大手。カテーテルなど心臓血管領域に強み。医薬品類も。米国、中国などで生産拡大。

4902 コニカミノルタ

複合機中堅。関連サービスも展開。液晶TACフィルム世界シェア3割。X線撮影装置(DR)も。

7731 ニコン

一眼レフカメラでキヤノンと双璧。半導体・液晶製造用露光装置で世界的。医療事業に注力。

7733 オリンパス

シェア7割の消化器内視鏡が柱。デジカメも展開。損失隠しで一時経営混乱。ソニーが大株主。

7762 シチズンHD

腕時計大手で電波時計に強い。16年に高価格「フレデリックコンスタント」買収。産業機械も。

精密機器大手5社の3年間の業績をマーケティング分析手法を使って分析した結果は?

精密機器大手5社を分析する指標は8つ(ROA、ROE、売上高経常利益率、総資産回転率、自己資本比率、売上高成長率、キャッシュフローマージン、フリーキャッシュフロー)です。

8つの指標を選んだ理由については、マーケティング分析手法を応用した株スクリーニングに使用する8つの指標は?で説明していますので、そちらを参考にしてください。

そして、今回の分析対象期間は、2015年度、2016年度、2017年度です。

全銘柄が3月決算となっています。

精密機器大手5社の3年間のポジショニングの変化は?

精密機器大手5社の3期分の財務データから8つの指標を算出し、マーケティング分析手法の一つである因子分析を実施。

その因子得点を求め、ポジショニングマップ上に示しました。

は2015年度、は2016年度、は2017年度を示しています。

全体の傾向として、2015年度から2016年度に左下側へ移動し、2017年度にかけて右上側へ移動しているように見受けられます。

このことから、2016年度にはセクター(業界)として、収益力が弱くなりましたが、2017年度には回復してきていると見ることができます。

この後、個別に分析・検証します。

各銘柄のポジショニングの変化は?

精密機器大手5社の各銘柄ごとの分析結果を、証券コードの若い順に紹介します。

4543 テルモ

ポジショニングマップは、右下側エリアに位置し、精密機器セクター5社の中では、相対的に収益力の強い銘柄であると言えます。

2015年度から2016年度にかけて収益力が弱くなっていますが、2017年度には回復し、2015年度を上回ってきています。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20158.1%9.3%13.9%58.2%56.7%7.3%15.3%56.8
20167.3%10.8%14.6%50.3%47.9%-2.1%16.1%-100.6
20179.9%14.8%18.1%54.5%50.6%14.3%19.5%70.5

指標は、2016年度に売上高が減少していますが、経常利益率は年々上昇しています。

ROAが2016年度に下がっていますが、ROE、キャッシュフローマージンは経常利益率同様に年々上昇しています。

2016年度にフリーキャッシュフローがマイナスとなっていますので、大掛かりが投資をしたことが伺えます。

株価は、収益力の強さを反映してか、3年間の平均伸び率(CAGR)が+17.7%と上昇してます。

4902 コニカミノルタ

ポジショニングマップは、右側エリアから左側エリアへ移動しており、年々、収益力が弱くなってきているように見受けられます。

効率性についても、年々悪化しているようです。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20155.9%6.1%5.6%105.7%52.7%2.9%5.7%-51.5
20164.9%6.1%5.1%95.7%52.1%-6.7%7.1%-1.9
20174.1%6.1%4.8%85.7%43.6%7.1%6.3%-68.4

指標は、売上高が2016年度に減少し、総合力を示すROA、収益性を示す経常利益率、効率性を示す総資産回転率、安定性を示す自己資本比率が、年々下がってきています。

フリーキャッシュフローが毎年マイナスですので、継続した大掛かりな投資をしていると思われます。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が-2.3%と低下しています。

7731 ニコン

ポジショニングマップは、左側エリアに位置し、精密機器セクター5社の中で、比較的収益力が弱いことを示しています。

2016年度に収益力が悪化していますが、2017年度には、2015年度のポジションより右側に位置していますので、収益力がしっかりと回復しているように見受けられます。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20154.0%5.5%4.7%85.6%54.6%-2.0%12.8%24.3
20160.3%0.7%0.4%73.6%52.8%-10.9%13.0%56.6
20175.1%6.3%7.8%65.3%52.2%-4.3%17.4%90.3

指標は、毎年売上高が減少しているのですが、特に2016年度の減少率が大きくなっています。その影響で、ROA、ROE、経常利益率が悪化していますが、2017年度には回復し、2015年度の数値を上回っています。

一方で、総資産回転率は年々悪化してきています。

逆にキャッシュフローマージン、フリーキャッシュフローは年々増加しています。

これらのことから、より収益力の強い事業に集中しながら、弱い部分については集約するなどの事業構造を転換するような動きをしているように思うのですがどうでしょうか。

7733 オリンパス

ポジショニングマップは、右側エリアに位置し、2016年度に左側エリアへ移動しかけたのですが、2017年度には元の位置に戻るような動きをしています。

これは、2016年度に収益力が悪化したのですが、2017年度には回復の動きを見せているということだと思いますが、2017年度のポジションが2015年度を右に超える事ができませんでしたので、収益力が回復したとまでは言えない状況にあると考えられます。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20159.1%17.0%11.3%80.4%38.2%5.2%6.0%-4.3
20166.5%11.3%8.4%77.1%41.1%-8.0%13.8%81.2
20177.8%13.6%9.7%80.4%45.2%6.2%12.1%41.8

指標は、売上高が2016年度に減少していますので、その影響が、ROA、ROE,経常利益率、総資産回転率の悪化の形で現れています。

経常利益率を見てみると、2017年度が2015年度を上回ることができていませんので、先ほどのポジショニングマップでの解説を裏付ける結果となっています。

株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が-3.9%と下落しています。

7762 シチズンHD

ポジショニングマップは、先ほどのオリンパス同様に、右側エリアに位置し、2016年度に左側エリアへ移動しかけたのですが、2017年度には元の位置に戻るような動きをしています。

これは、2016年度に収益力が悪化したのですが、2017年度には回復の動きを見せているということだと思いますが、2017年度のポジションが2015年度を右に超える事ができませんでしたので、収益力が回復したとまでは言えない状況にあると考えられます。

年度ROAROE経常

利益率

総資産

回転率

自己資比率売上高

成長率

CF

マージン

フリーCF

10億円

20157.5%5.7%8.8%85.7%56.0%6.0%8.6%5.3
20165.6%7.1%7.0%79.0%60.5%-10.3%10.5%4.9
20176.5%7.8%8.3%77.7%61.6%2.4%10.2%24.7

指標は、2016年度に売上高が減少し、その影響で、ROA、経常利益率が悪化しているのですが、2017年度には2015年度に近いところまで回復してきています。これは、収益力を維持するためにコストダウンを図り、その結果が収益力の回復へと結びついている可能性があります。

ROEは年々上昇しています。

特に、海外投資家は、ROEに注目する傾向がありますので、このあたりも影響しているのか、株価は、3年間の平均伸び率(CAGR)が+9.4%と上昇しています。

 

精密機器大手5社のポジショニング分析から見えてきたことは?

今回、ポジショニングマップでの動きと、8つの指標を合わせて分析することの重要性を認識したように思います。

それは、7733 オリンパスと7762 シチズンHDの事例です。

両銘柄ともに、ポジショニングマップの動きは、ほぼ同じものでした。

 

そこで、両銘柄ともに収益力が回復していないと判断したわけですが、実際に指標を見ていると、ROEと経常利益率の数値に歴然とした違いがありました。

ROEは、

オリンパスが、17.0% → 11.3% → 13.6%

シチズンHDが、5.1% → 7.1% → 7.8%

シチズンHDが伸ばしています。

経常利益率は、

オリンパスが、11.3% → 8.4% → 9.7%

シチズンHDが、8.8% → 7.0% → 8.3%

シチズンHDの改善度合いが大きくなっています。

以上の点が、株価の動きに影響(オリンパスは株価下落、シチズンHDは株価上昇)を与えたのではないかと思われます。

今回の注目銘柄としては、この7762 シチズンHD7731 ニコンを挙げておきたいと思います。

シチズンHDは今後も収益力がより強くなる可能性がありそうに思えること、ニコンは、今期、さらに収益力が強くなれば、ポジションが左側エリアから右側エリアへと移ることが想定され、そうなれば、株価上昇が期待できます。

その理由は、マップ上の左側のエリアから右側エリアへ移動しつつある銘柄の株価伸び率は高くなる、というポジショニング分析の法則があるからです。

 

今後も、ポジショニングマップの動きで大まかな状況を把握した上で、8つの指標で詳細な分析をする、ということを心掛けていきたいと思います。

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